すばる望遠鏡がとらえた宇宙を身近に!「HSCビューワ」を公開

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2018/03/08 国立天文台

すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC(注1))が撮影した本格的な天体画像データを、誰でも自由に楽しめる「HSCビューワ」サイトを公開しました。2014年から始まったHSCによる大規模戦略枠プログラム(HSC-SSP)の第1期データ(注2)をご覧になれます

HSCビューワ初期画面(左)と、ある観測領域の緑の枠内を拡大したようす(右)HSCビューワ初期画面(左)と、ある観測領域の緑の枠内を拡大したようす(右)。

HSCビューワの初期画面に表示されている緑色の枠内へとズームインすると、HSCの画像が見えてきます。さらにズームインを続けると、星座を形づくる星々が見えない暗い領域からも、沢山の小さな点々があふれ出るように見えてきます。この小さな点ひとつひとつが、星々が多数集まった銀河です。比較的近傍にある大きめで形がわかる銀河や、遠方にある小さく淡い赤い点にしか見えない銀河まで、異なる距離にある様々な大きさ、形、色の銀河が見られます。

メニューバーからは、開発者による「オススメ天体」も選べます。めずらしい重力レンズ天体である「ホルスの目」や、銀河同士のすれ違いによる重力相互作用で生じた、長い星の尾が特徴的な「おたまじゃくし銀河」など、データ内の名所めぐりをお楽しみいただけます。

ホルスの目HSCビューワで見た「ホルスの目」 。2つの遠方銀河が手前にある別の銀河によって同時に重力レンズ効果を受けている、極めて珍しい天体です。古代エジプトの神聖なる神の目にちなんで「ホルスの目」と名付けられました。おたまじゃくし銀河(UGC 10214)HSCビューワで見た「おたまじゃくし銀河」(UGC 10214)。小さな銀河がこの棒渦巻銀河の近くを横切り、銀河同士が重力を及ぼしあったと考えられます。その時におたまじゃくし銀河内の恒星やガス、ちりが引き延ばされ、約28万光年の長さの、おたまじゃくしの尾のような構造が作られました。

HSCが観測した広大な領域を見ていると、複数の銀河が重力を及ぼしあい、お互いの形を乱し合っているようすが多数見つかります。前述のおたまじゃくし銀河もそのひとつです。国立天文台ではHSCデータを使って、一般の方々が変形・衝突している銀河の形状の判別に参加していただくプログラムを現在開発中です。

ホルスの目衝突銀河UGC 12589と2MASX J23250382+0001068。2つの渦巻銀河がお互いの重力で引き合い、形を乱しあっています。おたまじゃくし銀河(UGC 10214)衝突銀河 2MASX J16270254+4328340。銀河が合体した後の姿だと考えられます。まわりには、衝突の過程でできたアーク(弓)状の構造が複数見えています。

HSCビューワを開発した、小池美知太郎さん(ハワイ観測所特任専門員)は「天文学の専門家でない一般の方々にも、この最新の大規模なデータに触れ親しんでもらいたいと思い、ビューワを開発しました。すばる望遠鏡が見ている、遠く深い宇宙に夢中になっていただければ幸いです」と述べています。

遠方にある小さく暗い銀河まで見通すことができるすばる望遠鏡。その本物のデータの中を「宇宙旅行」しながら、宇宙の広がりを感じてみませんか。

HSCビューワ

HSCビューワ解説サイト「すばるのデータで宇宙旅行」

(注1) HSCは合計8億7000万画素を持ち、満月9個分の広さの天域を一度に撮影できる広い視野を持った画期的な巨大デジタルカメラです。2013年から稼働しています。

(注2) HSCを使って300夜もの観測を行う大規模な戦略枠観測プログラム(HSC-SSP)を2014年から継続しています。その第1期データが、2017年2月27日(ハワイ現地時間)に全世界に公開されました。第1期データには、2014年からの1.7年間で取得された61.5夜分のデータが含まれており、満月600個分を超える広さの天域をカバーしています。総データ量が80テラバイト(一般的なデジタルカメラ画像の約1000万枚分)と膨大であるため、HSCビューワでは、ご自分のパソコンやタブレットから国立天文台のデータベースへアクセスして見ていただく方式を採用しています。

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