暑さや病害虫に強く、多収な水稲新品種「秋はるか」

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西日本における低コスト栽培に適した品種として期待

2018年2月19日 農業・食品産業技術総合研究所

ポイント

  • 高温登熟耐性品種である「にこまる」よりも、さらに暑さに強い品種です。
  • いもち病や縞葉枯(しまはがれ)病に強く、西日本で問題となっている害虫のトビイロウンカに対して「にこまる」よりも強いのが特長です。
  • 西日本の代表品種である「ヒノヒカリ」より約15%多収で、低コスト栽培に適した品種として期待できます。

概要

  1. 農研機構九州沖縄農業研究センターは、高温登熟耐性を「にこまる」よりさらに高めた水稲新品種「秋はるか」を育成しました。
  2. いもち病や縞葉枯病に強く、また近年、西日本で被害が頻発している害虫のトビイロウンカに対して「にこまる」よりも強いのが特長です。
  3. 西日本の代表的な水稲品種「ヒノヒカリ」より約15%多収なため、低コスト栽培に適しています。
  4. 栽培適地は、高標高地を除く東海以西の地域です。現在、佐賀県、静岡県等で試作が行われています。

関連情報

予算:運営費交付金、農林水産省委託プロジェクト研究「農林水産分野における気候変動対応のための研究開発温暖化プロジェクト(温暖化の進行に適応する品種・育種素材の開発)」
品種登録出願番号:「第32178号」(平成29年6月7日出願)

新品種育成の背景と経緯

西日本では、良質・安定生産のため、暑さに強い性質(高温登熟耐性)を持ち、かつ被害の大きな病害虫に強い水稲品種の育成が強く求められています。現在普及している、「にこまる」のような暑さに強い品種はトビイロウンカの被害を受けやすい傾向があり、トビイロウンカに強い高温登熟耐性品種が求められています。また、近年、低価格で品質の良い米には安定した需要があるため、暑さや病害虫に強く、低コスト栽培に適した多収米品種が望まれています。
このため、農研機構は、暑さやいもち病、縞葉枯病に強く、さらにトビイロウンカにも強い多収な水稲新品種「秋はるか」を開発しました。

新品種「秋はるか」の特徴

  1. 早生でいもち病に強く良食味の「泉2121(後の「西海265号」)」と、穂いもち病、縞葉枯病とトビイロウンカの抵抗性を合わせ持つ多収の「泉2507」を交配し、「秋はるか」を育成しました。
  2. 高温登熟耐性は両親をしのぐ”やや強”で、暑さに強い品種として広く栽培される「にこまる」の”中”よりも優れています(写真1、表1)。
  3. 「ヒノヒカリ」、「にこまる」よりもいもち病に強く、葉いもち・穂いもちへの強さはともに”強”に分類されます。また縞葉枯病への強さも”抵抗性” に分類されます。白葉枯病(しらはかれびょう)への強さは”やや弱”です(表1)。
  4. トビイロウンカには、「にこまる」の”弱”に対し、”中”程度の抵抗性を示します(表2)。
  5. 栽培適地は、高標高地を除く東海以西の地域です。熟期は「ヒノヒカリ」と同様の”中生”です(写真2、表3)。
  6. 収量(玄米重)は、「ヒノヒカリ」に対して標準施肥栽培では15%、多肥栽培では12%多収となります(表3)。耐倒伏性は「ヒノヒカリ」より優れ、倒れにくい品種です(写真2、表3)。玄米の千粒重は「ヒノヒカリ」と同程度です(写真3、表3)。
  7. 炊飯米の粘りは「ヒノヒカリ」ほど強くありません(表3)。

今後の予定・期待

暑さや病害虫に強いことから安定生産が期待でき、農薬を減らした低コスト生産に適しています。低価格であることが特に求められる外食・中食産業用において、炊飯米の粘りが強くないという特徴を生かした用途での利用が期待できます。現在、佐賀県、静岡県等で試作が行われています。

品種の名前の由来

「秋はるか」は、秋に稲穂が遙かかなたまで広がっている風景を思い浮かべて品種名としています。

種子入手先に関するお問い合わせ先

農研機構九州沖縄農業研究センター 企画部 産学連携室 産学連携チーム

利用許諾契約に関するお問い合わせ

農研機構連携広報部 連携広報部 知的財産課 種苗チーム

用語の解説

1)高温登熟耐性
一般に、出穂後、20日間程度の登熟期間の平均気温が26°Cを超えると玄米が白濁しやすくなります。このような玄米の白濁(「白未熟粒」と呼ばれています)は登熟期が高温になるほどその割合が増加します。白未熟粒は精米時に砕けて歩留まりを低下させたり、炊飯時に崩れるなどして食味に悪影響を及ぼしたりする問題があります。同じように高温に遭遇しても品種によって、白未熟粒の発生程度は異なります。高温下での白未熟粒の発生しにくさを「高温登熟耐性」と表現しています。近年の温暖化にともない水稲の品種開発において高温登熟耐性は重要な特性となっています。

2)いもち病
稲の病害の中で、我が国で被害が大きい主要病害の一つです。糸状菌(かび)により感染・発病します。苗、茎葉など稲のほとんどの部位を侵しますが、とりわけ穂首や籾に発病する(穂いもち)と、実が入らなくなるため被害が大きくなります。現在、日本ではほとんどの場合薬剤により防除されています。

3)縞葉枯病
稲のウイルス性の病害です。イネ縞葉枯ウイルスはヒメトビウンカを宿主として経卵伝搬し、ウンカが稲を吸汁することにより感染・発病します。本田で生育初期に発生すると、新葉が巻いたまま垂れ下がって枯れる症状(「ゆうれい症状」と呼ばれています)を発症し、生育後期に発病すると、出穂しても奇形となり、出すくみ症状を呈します。発病株は正常な結実がほとんど見込めなくなるため多発すると大きく減収することがあります。

4)トビイロウンカ
西日本を中心にたびたび大被害をもたらす稲の害虫で、2013年には九州を中心に約105億円の被害をもたらしました。株元付近で多発生した成虫・幼虫による吸汁害で株を弱らせ、いわゆる「坪枯れ」を引き起こします。国内では越冬できないため、梅雨の時季に毎年海外(中国南部)から飛来してきます。

5)白葉枯病
細菌病によって引き起こされる稲の病気の一つです。葉の傷口等から菌が侵入し、発病します。発病葉は先端から次第に枯れて灰白色となります。葉が枯死することによって、稔実が害され、減収になることがあります。

参考図

写真1 高温登熟耐性試験における「秋はるか」の玄米

写真1 高温登熟耐性試験における「秋はるか」の玄米
「秋はるか」(右)と「ヒノヒカリ」(左)。2016年に、出穂から20日間の平均気温が29.4°Cで栽培。「ヒノヒカリ」には白未熟(赤丸)粒が発生していますが、「秋はるか」にはごくわずかしか発生していません。農研機構九州沖縄農業研究センター筑後研究拠点(福岡県)にて撮影。

写真2「秋はるか」の育成地の標肥栽培における草姿

写真2「秋はるか」の育成地の標肥栽培における草姿
「ヒノヒカリ」(左)、「秋はるか」(中央、白線内側の4列)と「にこまる」(右)。農研機構九州沖縄農業研究センター筑後研究拠点(福岡県)にて2016年10月4日に撮影。

写真3「秋はるか」の籾と玄米

写真3「秋はるか」の籾と玄米
「ヒノヒカリ」(左)、「秋はるか」(中央)と「にこまる」(右)。農研機構九州沖縄農業研究センター筑後研究拠点(福岡県)にて撮影。

表1 「秋はるか」の高温登熟耐性と病害抵抗性
表1 「秋はるか」の高温登熟耐性と病害抵抗性

表2 「秋はるか」の虫害抵抗性
表2 「秋はるか」の虫害抵抗性

表3 「秋はるか」の栽培特性
表3 「秋はるか」の栽培特性
播種日;5/20~5/29、移植日;6/15~6/22、標肥栽培のチッソ成分;0.80kg/a、多肥栽培のチッソ成分;1.05~1.20kg/a、食味評価は、2011~2013年は「コシヒカリ」基準、2014~2016年は「ヒノヒカリ」基準で実施。九州沖縄農業研究センター筑後研究拠点(福岡県)にて栽培。

お問い合わせ

研究推進責任者

農研機構 九州沖縄農業研究センター所長 栗原 光規

研究担当者

同 水田作研究領域(稲育種グループ) 田村 克徳、竹内 善信

広報担当者

同 企画部産学連携室長 樽本 祐助

本資料は筑波研究学園都市記者会、農政クラブ、農林記者会、農業技術クラブ、九州各県の県政記者クラブ、日本農業新聞九州支所に配付しています。

※農研機構(のうけんきこう)は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネーム(通称)です。新聞、 TV 等の報道でも当機構の名称としては「農研機構」のご使用をお願い申し上げます。

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