国際協力と安全のはざまで

工事中断を乗り越え悲願かなえたギニアのカアカ橋
2017年12月25日 JICA

完成式にはギニアのコンデ大統領(右)も参加するなど、現地の期待の大きさが感じられた

ときに社会環境や治安情勢が不安定になる開発途上国で、関係者の安全を確保しながら事業を遂行することは難しい課題です。その国からの一時退避や事業の一時中断という決断をしなければならないこともあります。一方で、一時中断後に再開された事業が完成し、関係者の歓喜の表情がみられることもあります。今年6月に完成したギニアの「国道1号線」に架かる「カアカ橋」の工事もそうした例の一つです。

着工から5ヵ月後、エボラ出血熱の流行で関係者退避

道路の線形にも難があり、減速しての通行が必要だった「旧カアカ橋」

アフリカ大陸の西岸に位置するギニア。国道1号線は、首都コナクリと内陸部の都市、周辺国をつないでいます。カアカ橋は、非常に重要な存在にもかかわらず、建設から60年がたち、危険な状態でした。JICAは、安全な交通と輸送サービスを確保すべく、2013年からカアカ橋の架け替え支援を開始し、2014年3月、着工しました。

しかし、着工と相前後してギニア、リベリア、シエラレオネでエボラ出血熱が流行し始めました。そして着工から5ヵ月後の2014年8月、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。安全確保のため、工事関係者は退避を余儀なくされ、工事を中断せざるを得なくなりました。期待が大きかっただけに現地の落胆は大きく、関係者も後ろ髪を引かれる思いでの退避でした。

復興支援事業として工事再開、両国関係の強化にも

緩やかな曲線を持った安全性の高い線形の「新カアカ橋」

工事中断から1年8ヵ月がたった2016年4月、工事は再開されました。幹線道路の大切な橋の架け替えに、エボラ出血熱流行の打撃からの復興という側面も加わり、ギニアにとっても日本・JICAにとっても、さらに重要な意味を持つプロジェクトになりました。

長期間の中断で動かなくなった建設機械の手入れや、品質が悪化した資機材の再調達などが必要で、本格的な工事ができるまで3ヵ月がかかりました。そして、2017年6月15日、ついに新カアカ橋の完成式典が行われました。式典には、ギニアのアルファ・コンデ大統領も参加。期待と評価の高さがうかがえました。

120人の作業員全員と再会、無事故・無災害で完工

「関係者の安全を確保しつつ、事業も完成させることができたのが、この上ない喜び」と話す嘉門さん

JICAとともに、新カアカ橋の工事を担ったのが、大日本土木株式会社海外支店コナクリ作業所長(当時)の嘉門淳さんです。

嘉門さんは大学で土木を学び、海外での工事に強い関心があって、同社に入社しました。

カアカ橋は、同社にとって25年ぶりのギニアでの工事でした。かつての人脈はすでになく、ゼロから組織をつくり、工事が20パーセント以上進行したところで、突然、工事中断が決まりました。過去の途上国での業務の経験も生かし、嘉門さんは無事、関係者の退避を終えました。

嘉門さんは「エボラ流行による20ヵ月の中断期間を経て、120人の作業員全員がエボラに感染することなく再会できたこと、その作業員たちに繰り返し安全教育を行い、無事故無災害で完工できたこと」が強く心に残っていると話してくれました。現在は東京で、海外の11の現場の工事をフォローする業務を担当していて、「これからも関係者の安全を確保しながら、途上国発展のための工事を続けていきたい」といいます。

JICAは、国際協力事業の安全確保のため、事業関係者の安全対策を強化しているほか、ウェブサイトでも安全確保にかかわる情報を広く発信しています。