新たな軌道開拓により、衛星利用の新たな可能性を拓く

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平成29年12月23日 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、平成29(2017)年12月23日10時26分22秒(日本標準時)に種子島宇宙センターからH-IIAロケット37号機で打上げられた超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)の信号を、同日12時54分頃(日本標準時)からチリのサンチアゴ局で受信し、太陽電池パドルの展開、衛星の太陽捕捉制御について正常に行われたことを確認しました。

新たな軌道開拓により、衛星利用の新たな可能性を拓く

JAXAは軌道高度にして300kmより低い軌道を将来の地球観測などで利用するための研究をしています。 この軌道は「超低高度軌道」と呼ばれ、これまでの人工衛星にとって未開拓の軌道領域です。 この超低高度軌道を利用する最初の地球観測衛星が超低高度衛星技術試験機(SLATS:Super Low Altitude Test Satellite)です。 「つばめ」はJAXAが培ってきたイオンエンジン技術を利用して、超低高度衛星を開発するための技術評価を行います。三菱電機株式会社がプライムメーカーとして、設計・製造を担当しており、協力して開発を進めています。

  地上から100kmに大気圏と宇宙空間の境界線(カーマン・ラインと言います)があり、これを超える空間が「宇宙」とされています。 高度が高くなるにつれて空気は徐々に薄くなっていき、宇宙空間に達するころには大気はほとんど無くなるのですが、実は完全に無くなるわけではありません。 多くの地球観測衛星が周回する高度600~800㎞の軌道には、地上の1兆分の1程度の微量な大気が存在しており、この軌道を周回する人工衛星は常にこの微量な大気の抵抗を受け続けるので、除々に高度が低下していきます。 そのため、定期的にガスジェットを噴射して(=燃料を消費して)高度を戻してやる必要がありますが、宇宙にある人工衛星は自動車のように給油ができないので、燃料が尽きてしまうと軌道高度を維持することができなくなってしまい、その時点で寿命を迎えてしまいます。 「つばめ」が飛行する300~180㎞の超低高度軌道はさらに地表に近く大気が濃いので、600km~800㎞の軌道と比べて約1000倍もの大気抵抗を受けます。

そのため、超低高度軌道での衛星運用は、従来の衛星システムでは軌道維持のための燃料がすぐに枯渇して衛星寿命が極端に短くなってしまうため、実用には向きませんでした。 この課題を解決するために、「つばめ」ではガスジェットに比べ燃料の使用効率が10倍良いイオンエンジンを採用するとともに、大気抵抗が少ない小型の衛星を開発することで、超低高度でも長期間にわたって軌道を維持するための技術を実証します。
「つばめ」により、超低高度衛星の実用化に向けた一歩を踏み出します。

画像:超低高度衛星の概要

超低高度軌道のメリット

超低高度軌道を利用する人工衛星は、地上に近い分、より地球を高い解像度で観測することができます。たとえば、これまでの地球観測衛星の観測センサと同じ解像度を半分以下サイズのセンサで実現できる可能性があります。 これにより、観測センサの価格を大幅に安くするなどして衛星のコスト低減を図り、将来の地球観測の利用をさらに拡大していくことが期待されています。

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