定量的画像解析による核膜動態の解明

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核膜孔複合体の形成はPore-free islandを消失させる

2017年12月12日 理化学研究所

理化学研究所(理研)光量子工学研究領域画像情報処理研究チームの横田秀夫チームリーダー、竹本智子研究員と今本細胞核機能研究室の今本尚子主任研究員、三村恭弘特別研究員(研究当時)らの共同研究グループは、細胞計測技術と画像情報処理技術を駆使し、大量の画像から核膜動態を定量解析するフレームワークを開発しました。

近年の生命科学分野では、客観的で信頼性の高い画像の自動定量解析法が、多くの場面で求められています。真核生物のゲノムを取り囲む核膜は、二層の脂質膜、核ラミナ、核内膜タンパク質群、核膜孔複合体(NPC)[1]によって構築されています。細胞周期[2]間期に、核膜は次の細胞分裂に備えて成長を続け、その過程でNPC数が倍加します。しかし、間期での核膜の成長過程、特にNPC形成にはまだ不明点が多く、その機構を調べるには、形成に関わる動態の定量的な評価が必要でした。

そこで共同研究グループは、核膜の特徴的なドメイン構造である「Pore-free island[3]」が細胞周期の進行に伴って消失することに注目し、核膜動態の解明を目指しました。Pore-free islandのタイムラプス観察[4]は困難だったため、離れた時間点での変化を膨大な画像データから自動解析する定量的画像解析フレームワークを確立しました。フレームワークは、観察から画像処理、数値定量化、シミュレーションまでの一連の処理から構成されています。その結果、Pore-free islandは新しいNPC形成が進むと消失していくことが明らかになりました。さらに、核膜上にはNPC形成のための“場”が存在する可能性が示されました。

本成果は、これまでのNPC形成機構の解明に関わる研究に全く新しい切り口を与えるものであり、今後の核膜孔研究に新たな方向性を示すものです。

本研究は、英国の科学雑誌『Scientific Reports』(11月24日付)に掲載されました。

※共同研究グループ

理化学研究所
光量子工学研究領域 画像情報処理研究チーム
チームリーダー 横田 秀夫 (よこた ひでお)
研究員 竹本 智子 (たけもと さとこ)
テクニカルスタッフ 西村 将臣 (にしむら まさおみ)

今本細胞核機能研究室
主任研究員 今本 尚子 (いまもと なおこ)
研究員 小川 泰 (おがわ ゆたか)
特別研究員(研究当時) 三村 恭弘 (みむら やすひろ)

大阪市立大学大学院 工学研究科化学生物学専攻
教授 立花 太郎 (たちばな たろう)

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